クローズアップインタビュー

インタビュー

37号 鳥飼弁護士

資格認定講座「税務調査士」の果たすべき役割とは―
「法律家的な研鑽が積める場の創設で、税務調査のプロ育成」

鳥飼総合法律事務所 鳥飼重和 代表弁護士

平成25年10月から年内の3ヶ月にわたって、税務調査について、真のプロフェショナルを育成する「税務調査士」の資格認定講座が終了した。主宰するのは、税務訴訟で知られる鳥飼総合法律事務所の代表弁護士の鳥飼重和氏だ。税務調査の手続きが大きく変わり、税理士の税務調査への意識が高まるタイミングを逃がさず誕生したこの認定資格。あくまで、運営団体である(株)日本経営税務法務研究会の任意な資格だが、予想以上に大きなインパクトを与えている。制度創設の狙いや意気込み、将来構想について鳥飼弁護士にインタビューした。

2013年12月01日

税務調査のプロを育成する資格認定制度を創設した背景からお聞きします。

私は日本税理士会連合会(日税連)の顧問を務めていますが、税理士会など多くの研修会や講演会を通じて「税理士は法律家である」ことを訴え続けてきました。税理士には、会計専門家的な要素と法律専門家的な要素の2つが必要ですが、法律専門家的な要素については、残念ながら今も認識が不十分といえます。しかも、税務調査に関する具体的な規定が法律にありませんので、税務調査の現場では、法律ではなく国税側主導の実務上の慣行的なものが常識になっています。

法律を知っていれば、税務調査の対応が変わるのでしょうか。

はい。納税者を守るためには、法律を盾にする必要があります。しかし、慣行中心の実務であるため、法律を盾にできていないのが実情です。例えば、税務職員が法人税調査に来て、株主の変動があると、贈与や譲渡に関する個人の所得税や贈与税など別の項目に及ぶ質問が出る場合があります。法律的に言えば、この質問に答える必要はありません。このことが分かった上で、答えるかどうかを考えるべきです。

「法律に強い税理士」と「税務に強い弁護士」を合体させた、
納税者のための最強の“ガンダム”を創りたい

調査官の質問をすべて回答しなくてもいいわけですね。

税務調査は任意調査です。基本的には、納税者の意思で協力する関係です。しかし、多くの税理士が、協力関係であるはずの税務調査を強制される査察と同視している傾向があります。そして法律を知らないため、どこまで協力しなければならないのか、どのような場合には拒否できるのかを明白につかめず、国税側に突かれてしまうわけです。そこで、そうした状況を改善するため、税理士と弁護士を対象に税務のプロ中のプロを育成する「税務調査士資格認定講座」をスタートしました。「法律に強い税理士」と「税務に強い弁護士」を育成し、性悪ではない、善良な納税者を守る最強のチームで税務調査に臨むことで、国税側と対等な関係における税務調査を実現することを目的としています。簡単に言えば、税理士と弁護士を合体させて、善良な納税者の強い味方となる最強のガンダムを創るような講座です。

なるほど。講座の内容については。

国税通則法などの知識を習得しつつ、実務で活かすという視点から、ケーススタディをたくさん盛り込んだ実践的なコンテンツを用意しています。講師陣は、都築法務税務会計研究グループを主宰しているOB税理士の都築巌氏、元国税調査官の久保憂希也氏、元国税調査官で税務調査対策専門税理士の松嶋洋氏、そして私を含めた鳥飼総合法律事務所のパートナー弁護士が講師を務めます。税務分野において実質的には最高峰といえるレベルの方々といえるでしょう。認定講座の修了後は、税務調査士の認定資格を付与しますが、その後も継続研修などを開催していく予定です。

相当な反響があったそうですね。

10月からスタートした第1期生は、定員120人を超える申込みがあり、税理士は100人近く、通知弁護士は30人で、懇親会にも半数を超える出席者に集まって頂きました。今回は受講者を税理士と登録・通知弁護士に限定しましたが、来年開始予定の税務調査実務検定では、税理士事務所の職員、企業の経営者・経理担当者、ロースクール生・大学生等将来税務のプロを目指す人たちを広く対象にしたいと考えています。

受講者の方々を見て、どのような感想を持たれましたか。

皆さん、これまでのやり方ではダメだと真剣に思っていますので、非常に熱心に受講されています。10月から12月まで全6回、40時間のコンテンツを用意しましたが、受講者の出席率が非常に高く、正直なところ私どもも驚いています。受講料は21万円ですが、充実した講師陣と身に付けられる実務を考えると、リーズナブルな金額ではないでしょうか。実際、アンケートを見ると、「この講座は日本を変えるかもしれない」「2期以降は事務所の職員をたくさん参加させる」など、受講料以上にその中身に満足されています。

納税者を守る盾となる国税通則法を中核とする税法をもっと知る必要がある

税務調査のプロは納税者にとっても心強いですね。

今回の認定資格制度は、税務調査の対応だけを目的とはしていません。日本の復興には、自主財源として税収の増加を図る必要があります。国税側がどう頑張っても税収は増えません。企業の経営者など納税者側が納税意欲を高めてこそ、国家の財政危機を乗り越える原資となる税収が増えるわけです。そのためには、税務調査における納税者や税理士の恐怖心を取り除く必要があります。そのカギは、税務調査の法律を理解し、実践することに尽きるわけです。多くの企業が黒字をどんどん出して、事業基盤を強化し、将来の投資のために適正な範囲で節税など租税の軽減を図りながら、納税意欲を持って税金を支払う―。それが企業の本来の姿です。そのためにも、納税者を守る盾となる国税通則法を中核とする税法をもっと知る必要があります。

平成25年1月に国税通則法が改正されましたが、やはり法律を知らないと、上手く適用できないのでしょうか。

37号 鳥飼弁護士 (2)

今回の国税通則法の改正で、納税者の立場が改善されるようになりました。そのひとつとして、税務調査の予告の原則化などの改正がなされました。その実務的な意義は大きいと思います。ただ、今回の改正を活かすためには、やはり法律を理解することは欠かせません。例えば、例外として無予告調査ができることとしていますが、調査する側に対し、なぜ無予告でするのかをきちんと説明する責任が生じてきます。まずは、税理士自身が改正法で税務調査手続きが変わったことを強く意識し、法律家的にならないとダメですね。

税務調査士は差別化にも繋がりますね。

確かにそうですね。今回の改正法で、税務の中枢である調査において、国納税者が対等な立場に立てる可能性があります。今後、納税者の要求も高くなってきますので、そういう意味でも、税理士は法律家的な研鑽を積まなければなりません。税理士の中には、修正申告をすれば調査も早く終わり、丸く収まるというイメージを持っている方も見受けられますが、本来妥協する必要のないところまで妥協してしまっているのも事実です。ここが納税者からすると、すごく大きな負担となっています。軽微な金額はともかく、大きな金額を修正申告するような場合、納得しない経営者も出てくるでしょう。以前と比べて意見をはっきり言う風潮になっていますので、税理士を変えたいという声も出てくると思います。

納税者から税務調査士を紹介してほしいというニーズも出てくると思います。

どの税理士が税務調査に強いのか、納税者の立場からでも分かるようにして欲しいという要望は確かにあります。そこで、私どもは来年の末までに500人の受講者を目標とし、それ以降も受講者を増やし、受講者である税理士・弁護士を組織化することを考えています。そして、専用サイト「税務調査ドットコム」を開設して、納税者からの相談に応える仕組みを作っていきます。相談者の中には、今まさに税務調査が入っているケースも出てくるでしょう。その相談に対し、全国の500人以上のプロ中のプロがサポートするわけですから、これほど頼りになる組織は他にありません。是非、多くの税理士や弁護士の方々に参加して頂き、法律という明確なルールによる税務調査のあり方を学んで身に着けて頂きたいと思います。

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