クローズアップインタビュー

インタビュー

幾島 光子氏

「後継ぎ探しの難しさを少しでも軽減してあげたいー」
人材難に悩む企業を救う「経営承継士」をコーディネーターに

(株)経営承継 代表取締役 幾島 光子氏

社会問題となってきた中小企業の「事業承継」だが、事業承継を望む経営者が多いにもかかわらず、実際に「適切な後継者がいない」「市場の先行き不透明」といった理由で、事業承継が進んでいないのが現実だ。そんななか、高いマネジメントスキルを持った後継者候補を企業に紹介し、経営承継をスムーズに進展させるコンサルティングノウハウを提供する企業も出てきた。
例えば、(株)経営承継では、独自開発の中立な第三者的立場で事業承継対策プランの環境整備と舵取り役を担う「経営承継士(レガティスタ®)」を開発している。その活用等について、同社の幾島光子代表取締役に聞いてみた。




2018年12月14日

新潟大学法学部卒業。大手会計事務所で会計コンサルタントやIT戦略コンサルタントを経て、大手人材紹介会社に転職。エグゼクティブ部門の立ち上げに参画し、年間400名の転職希望者との面談を実施。2011年、中小企業の事業承継に関わる後継者紹介サービスを始め、2013年には(一社)中小企業事業承継協会を設立。2014年に事業承継専門の人材紹介会社「(株)経営承継」を設立し、税理士ら士業と連携した事業承継に関わる問題を幅広くコンサルティング。独自のプログラム「LegatoⓇ」を開発・提供し、業界全体のレベルアップを目的に、「経営承継士 レガティスタⓇ」をスタート。近著に「会社を絆ぐものがたり」(株式会社経営承継編著、幻冬舎刊)がある。

―まず初めに、社会問題となっている中小企業の事業承継がなぜ進まないかについてお話ください。

企業側の事情も複雑化していますので、難しい問題であるが故に後回しとなっている面もありますが、それ以上に、企業の株価対策やM&Aの専門家はいても、総合的な見地から解決してあげられる事業承継対策の専門家がいないのが最大の要因ではないでしょうか。

―事業を通じて、最近とくに感じていることとは?

「安易にM&Aをしたい企業経営者が増えてきたな」と感じます。金融機関やM&A仲介会社の台頭、インターネットでの企業マッチングなどの解決手法が認知されつつあることが背景にあり、「会社を高く売却できればそれでいい」と短絡的に考える経営者が目立ってきたというのが実感です。しかし、このM&Aブームが「事業承継=難しい」と初めの一歩が踏み出せない経営者の意識改革に役立っていることは事実で、事業承継を前向きに考える経営者が増えつつある状況は歓迎したいですね。

一そうした後継者問題で悩む経営者を救ってあげたい、というのが事業のきっかけですね。

大手会計事務所での会計やIT戦略のコンサルタントを経験してから人材紹介会社に転職し、ヘッドハンティングを手掛けてきました。いわゆるエグゼクティブクラスの採用の担当で、年間400名以上の転職希望者と面談してきましたが、そこでは新分野への進出で管理職を探しているといったケースはあっても、意外なことに40歳代後半から60歳台前半のマネジメント経験者の転職市場はほとんどありませんでした。外部から経営者を受け入れて次の経営者として育成していくとなると、そうした年代のマネジメント経験者がまず候補として考えられます。そこで、私の実体験を活かし、中小企業の事業承継問題を後継者紹介で支援していこうと、2011年に有料職業紹介事業を開始させました。


「幸せな事業承継に向け、人と組織の力で創業者の夢を実現」

―事業のコンセプトとは。

コンセプトは、「人と組織の力で創業者の夢を実現する」です。事業承継を単に経営者家族の問題と考えずに、組織として経営を考えられる企業に転換できる機会創出の手伝いをすること。創業者が次世代に何を残していきたいかという思いに寄り添い、幸せな事業承継の実現を総合的にサポートすることにあります

―中小企業対象の後継者紹介サービスは今までもあったのでしょうか。

おそらくなかったと思います。少し前までは、よくわからない人材を後継者として企業に送り込むことに対して風当たりも強かったですから。最近は、後継者紹介を行う大手転職エージェントも出てきて、その傾向も弱まってきた感があります。

―承継のニーズや顧客をどのように開拓されるのでしょうか。

事業承継の問題は、「資産承継」に加えて「誰にどのように継がせるか」という「経営承継」の問題があり、その一般的な相談先は会計事務所や金融機関、生命保険会社です。ですから、そうしたところと密接な関係がある会計事務所や企業をターゲットに営業を展開しています。親しい会計事務所からの紹介のほか、事務所との共催セミナーも開催し、見込み客を確保。信用金庫とのネッワークも拡充し、大手外資系保険代理店の営業ツール開発にも携わり、顧客紹介につなげてきました。

―最初の顧客は今でも覚えておられますか。

はい、第一号は埼玉県内の売上5億円ほどの鉄工所でした。親族承継が無理な状況のため、何人か後継者候補を紹介しましたが、社長が決められずにいたところに経済状況が悪化して売り上げが大幅にダウン。人材のリストラも余儀なくされる状況に追い込まれ、半年間かけて人材登用しましたが、残念ながら成約に至らなかったという苦い経験を味わいました。

―多くの反省点があったと。

中小企業の場合、大企業と違って早めの着地を求めてもそれが極めて難しいこと、また、後継者選びの悩みの本質に寄り添って解決してあげられなかった点がとても残念でした。今振り返ると、それらをクリアしていたら状況は一変していたのではないかと思われる案件でした。


 


「理想的な親族外承継のあり方には入念な準備と時間が必要」

―後継者紹介の難しさについては。

事業承継には経営者としての資質を育て受け継がせる「経営承継」と、相続税・贈与税を低く抑えて株式を経営者に引き継がせるという「資産承継」があり、その両面から一気に解消するのであればM&Aという手法が有効でしょう。親族内承継で後継者が決まっていれば、後は株価対策を中心とした相続税に関する問題から取り組めばいいわけですが、第三者承継としての後継者紹介はそれらを上手くコーディネートしないと上手く運びません。そこに最大の難しさがあります。


経営承継の本質とは、「今ある組織・事業をいかにうまく引き継ぐか」だけではなく、現経営者の力を借りながら後継者がうまく経営しやすいように組織体制・仕組みを作り変えていくことが重要です。つまり、永続企業に向けての経営改革を行っていくためにも、入念な準備が必要なのです。

―「資産」と「経営」のさじ加減がとても重要なポイントだと。

後継者候補の人材を投入するノウハウや、人材のスペック(要件)を決める組織や基準を持っている中小企業はほとんどありません。ましてや資金力が乏しい中小零細企業においては、人材紹介の採用コストの問題も大きく、事業承継に伴う後継者紹介事業のマーケットがさほど広がっていない要因もそこにあります。「資本」と「経営」を分離して株を創業者間で相続していき、最低でも5年から10年かけて承継のプロセスを推進し、「後継社長」にバトンタッチしていくのが一番理想的で楽な親族外承継の在り方ではないでしょうか。

―そこで、どうしたら人材のマッチングミスを防げるかのノウハウを集約したコンサルティング手法を開発されたのですね。

事業承継を遂行させるための前加工部分、つまり、意思決定に至るまでの業務フローをまとめたシステムが、「legatoⓇ(レガート)」です。コンサルティングの一連の流れを、高いコーチング技術と専門知識を駆使して開発したもので、「総合医」的なコンサルティングが行えるのが特徴です。事業承継プラン作成に当たっては、家族、関係者などの思いをひとつにまとめあげることが重要で、それを実現するためには、高い対話力がある人材としての経営承継士「レガティスタ®」を配置することで、経営承継をスムーズに進行させることを可能としました。


「付加価値高める事業承継コーディネート役に税理士は適任」

―「コーチング」と「中立性」がポイントですね。

はい。中立な第三者的立場で、家族経営会議の議長役を経営承継士が担います。事業承継の必要性に気付いてもらうことを出発点とし、その後のヒヤリング、関係者間の合意形成、承継プランの決定の一連のプロセスについては、経営承継士が力量を発揮します。事業承継の早期化と意識決定の加速化により、円滑な承継が促されることが最大のメリットです。


―コーディネート役としての「経営承継士Ⓡ」に、税理士も適任だという考え方はお持ちですか。


弊社が掲げるビジョンとして、「事業承継のインフラになる」がありますが、一緒に仕事をしてくれる税理士の先生方はその位置にあり、適任だと思っています。来年には、事業承継のコンサルティングプログラムを使って、企業へのビジネス展開を考える方を対象とした「経営承継士レガティスタⓇ」の養成講座を開設します。事業承継のガイダンスやコーチング、税務や民事信託、IPO、ファイナンス、廃業支援・リタイヤメントプランニング、M&Aなどの各分野に精通する多彩な講師陣をラインアップし、来年5月に正式オープンの予定です。それに先駆け11月からプレ講座を開講し、一部を公開していきますので、事業承継のビジネスを手掛けてみたい税理士の先生方にも参加して欲しいですね。


―税理士のビジネスとしての将来性についてはいかがでしょうか。


これからますます、事業承継・後継者対策のニーズは高まっていくでしょうから、ビジネスとしての商機は高いと見るべきです。税務アドバイスに加え、事業承継の“前裁き役”としての立ち位置に税理士が立てば、付加価値も望めます。また、承継プランを実行する各専門家らとの協業ビジネスの広がりも期待できると思います。新たな価値も見出せる事業承継ビジネスをより前向きに考えていただけたら幸いです。

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