クローズアップインタビュー

インタビュー

大山敬義氏

会計事務所とM&Aの大変革
「日本M&A協会」が中小企業を救う原動力に
~新たなインフラ作りに会計人のパワーを!!~

(株)日本M&Aセンター常務取締役 大山 敬義氏
   日本M&A協会 理事長  岩永 經世税理士

M&A仲介専門会社の㈱日本M&Aセンター(東証1部上場、東京・千代田区、代表取締役社長=三宅卓氏)を母体として、M&Aに取り組む会計人によって昨年10月に誕生した『日本M&A協会』。
日本初のマッチングから事業の譲渡成立までのプロセスをカバーする専用情報流通システムを通じて、年商1億円以下の中小企業にもM&Aを使った事業引継ぎサービスを実現させるなど、早くも日本の中小企業のM&Aを支えるインフラとして各方面から多くの注目を集めています。
そこで、協会発足によって、会計事務所とM&Aの関わり方にどんな変化をもたらすのかなどについて、日本M&Aセンターの大山敬義常務取締役と岩永經世日本M&A協会理事長に聞いてみました。

2013年02月01日

大山氏:安心して取引できるシステム構築を
岩永氏:事務所の提案型サービスの切り口に

協会発足の経緯やコンセプト、目指すミッションとは。

大山 (株)日本M&Aセンターは、全国の会計事務所の共同出資によって21年前にスタートしました。
当時は中小企業のM&A案件は殆ど無く、年間数件といったものでした。
従って当時は、将来を見据えた勉強と言いますか、ノウハウの蓄積を目指していたとも言えますが、ここ数年、企業の後継者不在の問題はますます深刻なものになってきました。

大手の信用調査機関である帝国データバンクの事業承継に関する調査では、日本の中小企業の6割以上に後継者がいない。
また、会計事務所の顧客の約7割が年商1億円以下で、その内の7割以上が後継者不在というデータもあります。
この問題に関しては、政府も様々な施策を試みていますが、根本的なことは一つも解決されていません。
特に、地方の深刻さが際立っています。

そこで、アメリカはどうなっているのかと調べてみると、これは衝撃的と言えるほどに中小企業のM&Aが活発でした。
年商規模で1~2千万円ほどのM&Aが実に盛んに行われています。
インターネットのあるサイトでは、譲渡したいという案件が4万件にのぼり、年間1万件がマッチングしているとのことです。
日本最大の当社の実績でも、年間200件ほどだというのに、です。

日本でM&Aが不活発なのは、安心して取引できるシステムが構築されていないからです。不動産業のように全国的に統一されたシステムがあれば、会計事務所に限らず、色々な分野の人が安心してM&A業務に参入できます。
このシステムを構築し、普及させることが当社と日本M&A協会の役割と考えています。

岩永先生が理事長職を打診されたときは、どのような思いを抱かれましたか。

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岩永:企業を指導する立場の税理士としても、中小企業の後継者不在の問題が顕在化し、M&Aのニーズが高まっていると肌で感じていました。
ですから私が理事職を引き受けたのは、後継者がいない、企業価値もそれほど高くない、それでもその経営者にはハッピーリタイアをさせてあげたい、そういう中小企業のゴーイングコンサーンを下支えするためのインフラ作りに共感したからです。
我々会計人は社会的インフラとしての使命・役割を担っており、協会が全国各地の志ある会計人に声掛けをして、M&Aに関する情報のインフラを作り、中小企業を救う原動力なろうと。ましては、私が理事長を務める会計業界のフロンティア団体の「NN構想の会」の趣旨にも合致しておりますから、喜んで引き受けさせて頂きました。

協会発足時に全国から約360の会計事務所が結集しました。
会計事務所業界全体からするとまだまだ少数ですが、それぞれが地域の有力な事務所です。
今後さらに、M&Aが成長領域であり、事務所業務の一端を担うものになり得るということをアピールしていきたいと考えています。

協会の具体的な活動については。

大山:M&Aに関する勉強会をイメージする方も多いのですが、あくまで実践的なM&A業務を遂行する団体を目指しています。
具体的な活動としては、二つあります。
一つは、事業引継ぎ情報流通システムである「“どこでも事業引継ぎ”サポートシステム」の活用を深化させていくこと。
これは会員限定のシステムですが、これによって日本全国のM&Aのマッチングが可能になります。
もう一つは、M&Aに関する資格制度を確立し、その主宰者になることです。
金融機関が盛んにFP資格の取得を進めていますが、M&Aのエキスパートとしての資格もその一つとして認めてもらい、将来的には金融関係者なども協会会員として参画して欲しいですね。

話題を集める協会ですが、M&Aに関する会計人の現状認識および関わり方についてはどのように捉えられているのでしょうか。

岩永:その重要性の認識には大きな差があります。
いわゆるMAS志向の高い事務所は経営計画にも踏み込んで、M&Aの重要性を既に認識されています。
しかし、無関心なところも多いというのが実状ではないでしょうか。

大山:啓蒙が必要なのでしょうね。

岩永:事業承継の問題は避けて通れないという認識では一致しているんです。
後継者のこととか、事業の将来性を考え、突き詰めるとM&Aも重要な選択肢の一つであるという点を広めていく必要がありますね。

今後、会計事務所はどのような形でM&Aと向き合っていくべきでしょうか。

岩永:M&Aは資格業務ではないので、誰にでもできます。
それだけにリスクも大きく、それが会計事務所の社会的役割だと言われても躊躇する人が多かったのも事実です。
しかし、そのリスクを担保できるような仕組みが整えば、業務として積極的に取り組んでいく機運が出てくると思います。

大山:リスク回避という点では、“どこでも事業引継ぎ”サポートシステム“にはエスクローという仕組みがあります。
これはアメリカで活用される知恵なのですが、要するに問題が起きた時に一番に責任が問われるのが決済の当事者で、交渉に携わった人ではないということです。
これによって、会計事務所が損害賠償といった重大なトラブルに巻き込まれることもありません。

協会発足で会計人に求められる新たなスタンスについて伺います。

岩永:プロダクトアウトからマーケットインの時代になって久しいのですが、会計事務所もスペシャリストから“プロフェッショナル”へと脱皮すべきなのです。
経営問題で悩む社長の7割が、顧問税理士の顔を思い浮かべると言います。
自分の土俵から出て、顧客と共に考える当事者意識が求められています。
私の事務所では、個人の限界を組織の限界にするなということをよく言います。
要するに、個人のスペシャリストとしては限界があり、顧客のニーズに応えられないということです。

M&A専門家として、中小企業に元気を与えるために、今後どのような役割を果たしていくべきでしょうか。

大山:日本M&A協会は、社会のインフラになりたいと考えています。
日本M&Aセンターは、もともと地域を担う会計事務所の皆さんが作った会社で、地域を活かす使命を持つ会計事務所をサポートしていきます。
会社の存続を守ることが地域の雇用を守り、つまりは地域を守ることになります。
M&Aは、地域、会社、雇用を守るという点で、大きな役割を果たすのではないでしょうか。

岩永:中小企業は二つの大きな悩みを抱えていて、一つはこれまでのやり方が通用しないこと、もう一つは将来像が描けないことです。
顧客と一緒になって未来を考える、将来像を描く、目標設定に関わる。
これらの中で、M&Aが有効な対策として浮上するわけです。

今後の展開、会計業界へのメッセージをお願いします。

大山:M&A業務というのは、アメリカでは会計人ではなく弁護士の仕事であり、世界的に見てもその傾向があります。
ところが日本では、多くのスペシャリストの中で、特に中小企業の分野では、会計事務所がメインといっていいくらいで、これは特筆すべきことです。
自信を持って広げていって欲しいものです。
M&Aに対する意気込みをひしひしと感じているところでもあり、当面は、500名規模の会員組織を目指していきますが、より大きな組織に発展させていきたいと考えています。

岩永:今回、年商1億円以下の中小企業にも事業引継ぎのサポートシステムが確立されたことは、非常に心強い。
これまで、そうした受け皿がなかったわけですからね。
これにより、大都市圏以外に地方おいても、M&Aの手法が活用できるベースが整ってきました。
会計事務所も対応型から提案型のサービスへと転換して行かなければならず、その一つの切り口としての日本M&A協会が、顧客のための社会インフラとして存在価値が深まっていけばと願っています。

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