クローズアップインタビュー

インタビュー

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発足1年「アコード租税総合研究所」の新たな展開とは

所長 酒井克彦氏

一般社団法人アコード租税総合研究所

「ファルクラム」新設で実務家向け租税学ゼミ開講

2010年04月01日

まず、改めて研究所発足のきっかけについてお伺いします。

私は以前、税務大学校におりましたが、転身して大学で教鞭をとるようになりました。
その後、大学での教育活動とは別に、様々な税理士先生方の勉強会などに参加させていただく機会が増え、多くの税理士先生と深く関わりを持つことになったわけですが、一方で、税務当局の方と親しくさせて頂いたこともあり、官と民の両方の話を聞く機会が増えてきました。
そうしたなかで、常に話題になるのは、租税訴訟に関するものでした。
そこで痛感したのは、納税者と租税行政庁との間で、租税法の解釈・適用問題や税務執行の問題なども含めて、お互いに「情報の共有」がなされていれば生じなかったであろう紛争がかなりの数に達しているという実情を実感し、コンフリクトの未然防止を議論することの重要性に気づきました。
そこで、納税者と行政双方の情報の橋渡し役、つまり、“架橋”を図ることを目的に発足させたのがアコード租税総合研究所です。

税務当局からの情報公開についてはどう捉えていますか。

情報公開の手法等については、以前から関心を持っていたテーマでした。
これまで、税務雑誌等のメディアで当局の考え方が示され、税務署などでも当局での見解について比較的容易に相談に応じてくれるなどして、情報を知る、得るためのルートはそれなりにありました。
ところが、平成16年制定のアドバンスルーリング、いわゆる文書回答手続きに関する整備等をはじめ、情報公開法の公開請求や個人情報保護法の開示請求など、いわば情報を引き出す公式なルートが確立されてきたことにより、逆に、税務当局からの情報が出にくくなってきたのは確かです。
情報を発信すべきところ、むしろ、逆転しているのではないかと思うようにもなり、だからこそ、「研究家と実務家、そして税務当局との橋渡し」としての役割を担う機関が必要だと考えたわけです。

組織運営や具体的な研究会活動とは。

様々な形態のシンクタンクはありますが、学術的な研究だけでなく実務に役立つ研究を中心に、税理士や会計事務所職員のスキルアップに結びつくようなセミナーも行っております。
現在、
①国税通則
②納税環境
③所得課税
④消費税課税
⑤資産課税
⑥国際課税
⑦登録免許税
の各検討委員会を設置し、毎月2回の研究フォーラムにおいては、多方面から講師を招き、学者、税理士、官庁の三者間での情報共有化を図ることで、問題の掘り起こし、検討を行い、問題意識の共有にも役立てています。
また、租税法のあるべき解釈論のほか、立法論としての提案や、行政手法、例えば税務調査に関わる法律問題などについても、テーマに掲げて研究していきたいと思っています。

蒼々たる先生方が研究員となっておられますね。

はい。
設立趣旨にご賛同いただいた多くの先生方のご協力の下で当研究会は成立しております。
顧問に品川芳宣早稲田大学大学院教授をはじめ、今村隆駿河台大大学法科大学院教授、玉國文敏中央大学法学部教授、吉村典久慶應義塾大学法学部教授、阿部泰久経団連本部長といった研究主幹のほか、このたび税調委員になられた三木義一教授や、占部裕典教授ら、研究顧問に45名ほどの租税法学者が登録しております。
品川先生を顧問に迎えたのは、税務当局から学者に転じられた草分け的な存在の方であり、中立的な研究所という観点からであります。

ところで、昨年8月の設立シンポジウムの反応はいかがでしたか。

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東京税理士会館で開催した設立記念シンポジウムのテーマは、納税者の保護と納税義務の履行の確保―租税行政手続の充実と租税回避への対応―」。
登壇した5名の顧問・研究主幹からは「租税回避の否認」について、賛否の意見が飛び交う結果ともなりましたが、それでいいんです。
議論を交わせる場としてのユニークさが会の特徴として出せればOKでしたから。
当日は会員をはじめ約100名の方に参加していただきましたが、思った以上に反応は良かったと感謝しております。
納税者保護の観点からは、納税者権利憲章というイメージが連想されますが、決して弱者救済のための納税者保護というのではなく、適正な情報が納税者に正しく伝わっていれば、正しい納税は実現できるはず。
あくまで私的な考え方ですが、正しい情報を提供して税務当局との対等な関係を構築していく、それが正しい納税者保護のあり方、理想ではないでしょうか。

今後の方向性については。

1年を経過し、より多くの賛同者に集まって頂く一方で、「より高度な知識を得たい」といった要望が多く、これにも応えられる新たな組織を発足させます。
アコード租税総合研究所でも、租税判例解析講座や租税法理論講座といった他のセミナーでは受けられない独自のカリキュラムを用意していく方針ですが、新たな組織ではその点に特化した研究会を設置することを計画しております。

具体的な内容については・・

「一般社団法人ファルクラム(FULCRUM)」という団体を立ち上げ、アコード租税総合研究所での研究成果の発信を行うとともに、よりコアな研究会を内部に作る予定です。
「ファルクラム」とは「要」という意味ですが、租税実務界での「要」となる高度な租税専門家の養成のためにゼミ形式の研究会を開講します。
税理士・弁護士や租税当局職員のスキルアップを目標とし、いわば実務家のためのゼミを想定しております。
そこでの研究成果の一部はファルクラムが発行する雑誌に掲載するなどして、アコードの会員への情報提供にも繋げていこうと考えております。
また、ファルクラムからアコードに研究委託をして、その成果をフィードバックしてファルクラムの出版物等で公表していくという形をとる予定です。

5月に発足セミナーがあるそうですね。

はい。
「税務訴訟を実務に活かす!」をテーマに5月15日、13時30分から、第一法規(株)9階ホール(東京・港区南青山2-11-17)で発足記念セミナーを開催致します。
当日は、「最近の税務訴訟の動向」「重要租税判例の分析と解説」について、講演します。当研究会活動の第二ステージに大いに期待して頂きたいと存じます。


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