クローズアップインタビュー

インタビュー

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素人では分かりずらい美術品の鑑定評価

藤原一世氏

株式会社アート・アドバイザリー・バンク
代表取締役

日本初の「公正市場価格」鑑別システムを
税理士先生にも活用して欲しい

2008年06月01日

美術品鑑別の専門会社を立ち上げた経緯は。

私は海外を中心に美術品鑑定に40年以上携わっていますが、日本における美術品の値段のつけ方は非常に曖昧と言いますか、業者が都合良く値段をつけており、以前から疑問を抱いていました。
20年ほど前にオークションが登場したことで、昔のような強引な値段のつけ方は少なくなりましたが、やはり値段に対する明確な線引きはありませんでした。
お客様としても「絵の値段はあって無いようなもの」という昔ながらのスタイルに流されていたわけです。
しかし、美術市場を発展させるには、美術品の売買を前提とした「できる限り安く買い」「できる限り高く売る」という従来の評価法を離れ、中立の立場での評価を定着させる必要があります。
そこで、公正なる市場価格「Fair Market Value」を標榜し、国際的に通用する適正評価を市場に浸透させるために、日本初の鑑定専門会社「「アート・アドバイザリー・バンク」を設立しました。

減損会計制度の導入も美術品の評価に影響を与えましたね。

そうですね。
平成17年度から減損会計制度が導入されたことで、美術品も時価評価の対象となりました。企業会計における「時価評価」の対応においても、美術品の公正で中立な評価は不可欠になったわけですが、上場企業から自社の美術品や所有物の評価依頼が寄せられているほか、美術館やホテル、特殊法人、ファンド会社、金融機関などから美術品評価の依頼を受けています。
弊社の場合は、美術品の価格に応じて鑑別料を段階的に設定しております。

実際、美術品をどのように評価するのでしょうか。

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弊社に美術品を持ってくる方もいますが、大きい絵画などは私どもが出張して、現地で1点ずつ細かくチェックしたり写真撮影などを行います。
そして、それらの資料や写真を持ち帰り、30年以上の経験あるエキスパートたちが集まって協議を行います。
その際、公開オークションのデータや業者同士の取引価格、実際の相場などを加味して、その日現在の市場価格を弾き出します。
評価は通常1週間から10日間ほど掛けて行い、評価終了後には1点ずつ写真を貼り付けた鑑別証(評価書)を出します。

税理士さんとっても美術品の評価は無視することができませんね。

税理士の先生方も相続やM&Aなどに絡んで美術品の評価が求められる機会があると思いますが、一番重要なのは、無駄な時間をかけずに一発で答えを出すことでしょう。
そもそも美術品を所有する方は、その作品が高額だと思って評価を依頼してきますが、他人にとってはその美術品が評価に値するものなのかどうか、ほとんど分からないと思います。
事実、弊社でも評価が「ゼロ」だった案件もあります。
ですから、税理士の先生方が相談を受けた場合、お客様の美術品が調査などに手間をかけるほどの作品なのかどうか、それを知るだけでも弊社にご相談して頂きたいですね。
最近、とくにM&Aに絡んで保有する装飾品や美術品はいらないので、すぐに「処分価格を出してほしい」という要望も増えています。
売却側がその評価を付けて提示することにより、売買交渉がスムーズにいくはずです。
逆に評価がないと、依頼先を探したりする手間と時間が掛かるだけです。

最近は美術品の評価から買取まで一元的に対応する業者も出てきていますが・・

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私どもはあくまで評価する立場の人間です。
自分で評価したものを自分で買うのはおかしな話です。
買取が付随していれば、業者は「買いたい」わけですから、真実を言わない可能性が極めて高い。
「転売」が主目的であれば、客観的な市場価格を出せる立場にはありません。
弊社にも美術品売買の関連会社がありますが、完全な別会社です。
それを使うかどうかはお客様の判断であり、私どもは美術品の「評価」に対してしっかりと料金を頂戴しています。
また、企業と顧問契約を結び、美術品のメンテナンス等も実施しております。

美術品の評価において難しい点とは?

お客様が何のために購入するのか、そのニーズを聞き出し、それに応じて価格を評価することが重要です。
コレクションとして欲しいのか、資産保全が目的なのか、ニーズによって評価は変わってきます。
コレクションの場合、その人にとっては金額よりも「買えるかどうか」が重要となります。
チャンスを逃したら、二度と市場に出てこないかもしれない。
また、現時点では5千万円の価格がついても、作品の希少性によって今後は5千万円で購入できないかもしれない。
こうした事情を踏まえてアドバイスするには、長年の経験や実績が欠かせないといえますね。

状況に応じて、美術品の価格も変化するわけですか。

「公正なる市場価格」とは「相場」のことをいいます。
そして、相場を踏まえて美術品の買い手を探すわけですが、購入者は手数料などを加味した「正味実現可能価額」を支払うことになります。
一方、安くてもいいからすぐに美術品を処分し、現金が欲しい方もいるでしょう。
こうした場合、買い手は相場よりも安い「処分価格」で購入することができます。
状況によって価格も変動するわけです。

今後の事業展開については。

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10数年前に1兆円規模と言われていた日本の美術市場も、現在は1500億円程度と大きく減少しています。
これは、多くの作品が昨今の実勢価格で3分の1、5分の1になってしまったことで、美術品の購買に対する消費者の不信や不満が強く影響しているものと考えます。
しかし、国民が美術品の価値の公正さや基準を理解すれば、市場回復に必ず繋がるはずです。
弊社は、日本初の美術品鑑別専門会社として、これからも美術市場のオープン化を促進し、「公正な市場価格」の存在の訴えと査定の実行を普及させたいと思います。
税理士の先生方には、美術品の「動産鑑定士」という認識を持っていただきたいのと同時に、美術品等の“公平なジャッジ”が必要な時にこそ、弊社を上手く活用して頂きたいと思います。


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