税理士必見!
非対面サービスへシフトチェンジ!
効果が上がるWeb面談のポイント
イプシロン(株)代表取締役 角田 達也氏
2021年12月01日
2021年12月01日
角田 達也氏
商品企画/業務改善コンサルタントとして現在、北海道から九州までの大手会計事務所の戦略顧問を務め、地域勝ち残りの展開を支援している。税理士団体やマスコミでの講演活動も多数ある
体系的に、文書型と対面式に大別されます。それぞれメリットとデメリットがありますが、どういう目的で何をしたいのかによって、コミュニケーションの手段は適切に使い分ける必要があります。電話やメール、SNSといった様々な方法がありますが、どういう場面でどういうコミュニケーションを使っていくのかの使い分けができる会計事務所でないと、顧客への効果は薄れてしまいます。まずはそこがポイントになるのではないでしょうか。
まずは、zoomやSkype(スカイプ)を利用したWeb面談を行うのなら、それに関する所内標準ルールを作ることから始めるべきです。税理士法を順守するためにも、ルール化に当たっては、やりとりや判断などの記録をきちんと残しておくことが重要です。これまで、顧問先への面談については特段ルールがなく、検証もされていない事務所が多いと思います。しかし、Web面談の場合は、例えば何を話してどんな税務相談があったのかといった内容を、今まで以上にしっかりルール化しなければなりません。Web面談のツールは正直どうでもよく、重要なのは事前の準備です。
対面よりもWebの方が、今まで以上に準備をきちんと行わないと効果が出てきません。何を検討し、何を決定するのか。どのくらい時間かけて、何を画面共有するのかなどの準備が重要です。また、zoom用の話の振り方、聞き方、リアクションなど、Web面談におけるファシリテータ―訓練も行う必要があると思います。
社内のコミュニケーション、例えばミーティングや朝礼も自分たちでzoomを通してやってみてください。それが一番の訓練だと思います。その中で、どうやったら相手に伝わるのか、逆にどうやったら顧客側が感じていることを聞きとれるのかを、OJT方式でやってみることがとても大切です。Web面談の記録を残して検証できるようにすれば、教育訓練や、自己分析にも応用できます。標準ルールを構築し、ツールを揃えて準備を進めて、訓練してから実施するという順序を決めて取り掛かることが重要です。
確かにありますね。把握しておくべきWeb面談のリスクとしては、相手の要望をしっかり把握しないで、何でもかんでもzoomやWebに切り替えると、それが逆に満足度減少につながる場合があります。また、活用してはいけない場面で実施することもリスクにつながります。一番多いのはクレーム対応とか失敗したときのお詫びとかをZOOMでやったらもうアウトですね。あと、顧問料の見直し交渉などを安易にzoomで行うと、最悪の結果を招く場合もあるので、要注意です。今の時代、そう簡単に価格改定を切り出せません。会計事務所サービスの提供方法や価値の見直しなどで顧問料改訂の交渉をする際にも、相手は人なので腹の探り合いも想定されますから、zoomでやるべきではありません。また、決算予測もWebには向いていないので避けるべきです。クレーム、お詫び、交渉、決断、決定、これはやっぱり対面で人として、きちんと担保した方がいいと思います。
はい。情報セキュリティについての対応も、リスクを拡大させる要因ですね。情報漏えいや各種財務データ等の複写、重要事項が意図せずに見える、聞こえる、といったリスクも内包します。また、zoomでよく指摘されるのが通信環境の問題で、しっかり確認・準備をしてないと5分程度で終わってしまう可能性も高いです。そうなると顧客満足度は逆に下がってしまいます。しっかりリスク対策を講じた上で、zoomやWebに変更していけば、効率も上がります。しかし、ブームとしてのzoomに流されてしまうと、一番大切な本質をも見失ってしまいます。結局、何の手立てもしないと、このコロナ禍において“従来型の顧問料という究極のサブスクリプション”が崩壊する可能性もありますから、細心の注意が必要です。
一番大きい効果は、必要な時に必要な価格ですぐ相談に乗ってあげられる、というオンデマンドサービスが実現しやすい点が挙げられます。コロナ禍でも顧問先からの融資相談にすぐに対応できる事務所は、頼れる事務所として顧客満足度を高められます。また、税務以外の相談で、ライセンス等に関係なく適切な人が、適切な時に問題解決してあげられれば、 それが大きなビジネスチャンスに繋がったりもします。また、そもそも移動しないで面談が可能になることから、面談時間の短縮や、面談回数を増やすことで生まれる業務効率性の向上も期待できます。
さらに、マーケット(市場)の拡大効果も考えられます。これまで、地域密着型の会計事務所経営と言われていますが、「クラウド会計で処理してWebで面談」というスタイルであれば、場所や時間に捉われない対応が可能で、顧客拡大のネット戦略も比較的実現しやすくなります。
確かにその流れが一般的になっています。これまで対面で行ってきたセミナーを非対面のオンラインセミナーに切り替えることで、どんな状況下でも開催できるという強みが生まれ、効果を上げやすくなります。一方、こうしたことを事務所内で行うと考えると、所内にスタジオなどの設備が必要になります。しかし、顧客側はリアルタイムで大量の情報が得ら れ、事務所サイドでも一回の配信で伝えられるメリットは大きく、今後、事務所のスタジオ化は話題になりそうです。
私どもでは、税理士が適切なITツールを提案することで企業の経営課題を解決し、DX推進をサポートできるように、「中小企業DX推進研究会」を立ち上げました。ここでは、会計をコアにした業務の最適化に関連し、「ITで代替えできる作業工程」についてコンサルティングを展開しています。
例えばクラウド会計を使い、DX化して成果物も共有しているのにもかかわらず、わざわざ行ってそれを紙ベースで説明するっていうのはナンセンスですよね。一部分だけの話ではなくて、事務所として、どうやってDXに切り替えていくかという戦略性とか、プロセス設計がないと上手くいきません。こういう流れが全部一環で続いていくところが重要ではないかと思います。
そう思いますね。Web面談は事務所にとって大きなターニングポイント。今まで、恐らく意識したことがない、「現場に出向いて現物を確認する」ことの重要性を改めて再認識する必要があり、単純に今まで人間がやっていたことをWebを通してやるんだと思ったら大間違いです。
確かに、いわゆるバーチャルリアリティの世界ですね。最後は5G、6Gになってくると通信の世界が対面と同じようなかたちになっていくと思われ、画面上に帳票が出てくるとかいうような時代になっていくような気がします。今それがすぐにできるという話ではなくて、そういうふうに進化した時への対応の第一歩として、顧問先に出向かなくもできる、という点で高い効果があるのではないでしょうか。ここまで行き着くと会計事務所の顧客マーケットや売り物が大きく変わり、付加価値のあり方やサービス価格を見直さないと生き残れなくなるなど、すべてのことに繋がっていくと思われます。これが一番大きなWeb面談導入で期待される効果なのではないでしょうか。
コロナ禍においては、税理士業界も“非対面サービス”へとビジネスモデルをシフトしていく必要がある。会計事務所も顧問先も「面談による接触」のリスクを避けるために、今後、対面でのサービス提供が主流になってくるだろう。そこで、withコロナ時代に会計事務所の運営を考える際に注視すべきポイントについて、会計事務所向けに製販分離経営やDXの推進指導やサービスを提供するイプシロン(株)代表取締役の角田達也氏に解説してもらう。