クローズアップインタビュー

インタビュー

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コンセプトは「給与を決めるソフト」
給与体系を変えずに社員のやる気を引き出す

認定給与設計士・税理士 溝口 康隆氏

明確な基準がないまま運用されがちな中小・零細企業の賃金・給与体系は、経営者にとっても大きな悩みの一つだ。
一見、社会保険労務士の仕事と思われがちなこの分野だが、「給与を決めるソフトを作る」という発想で、経営者と社員のための理想的な「給与の仕組み」を考案した税理士がいる。
大分・湯布院で事務所を構える溝口康隆税理士に、20年以上かけて辿り着いたという、給与に対する考え方を整理してサポートするソフト「給与きめ太郎®」について聞いてみた。


溝口康隆(みぞぐち やすたか)氏 プロフィール
株式会社給与設計事務所 代表取締役
一般社団法人給与設計士協会 代表理事


法政大学卒業。平成5年溝口会計事務所を設立し所長に。農業法人スペシャリストとして農家・農業法人の立上・支援および医業経営コンサルタントとして医業・介護の支援を長年に渡り行う。給与の考え方を20年近く温めていたが、このたび「給与設計」の考え方をもとにソフト開発を行い、それをもとに「給与きめ太郎®」「給与設計Pro」を商品化し、普及活動を展開中。

2017年04月13日

― そもそも「給与の改革」に取り組もうとしたきっかけからお話しください。

 私は、平成5年に、国内屈指の温泉街として有名な大分の湯布院で開業しました。当時は県外資本が多く投入され、旅館業も好調な時期ではありましたが、当然、長くは続かず、至る所で経営改善計画を迫られている状況が生まれました。結局は、返済計画をどう立てるかに焦点が当てられ、そのしわ寄せが人件費のカットにたどり着く。こうした状況を目の当たりにし、税理士として税金計算だけでなく、売上の源泉である「人」、つまり経営者と従業員が納得する公平な給与体系が創造できれば、人件費問題に頭を悩ます負担も削減される。それによってみんなが事業に前向きに取り組める、と考えたのが発端ですね。

― つまり、「給与の決め方」にはルールが必要というわけですね。

はい。給与を決める3大要素として、「仕事と能力に見合うもの」、「仕組みが明確である」、「給与水準が世間相場・業界水準と比較して適正であること」が重要なポイントです。労働環境が大きく変わる時代だからこそ、これを従業員と経営者が相互に理解して初めて、公平かつ明確な基準で給与の仕組みが決められるわけです。誰もが納得でき、できるだけシンプルな給与体系にすることで、社員のモチベーションも必ずアップします。





社員には明確な基準をベースに納得が得られる回答が必要

― 給与額を変えずに給与の中身を組み替える仕組みとは?

一言で言えば、給与配分を仕事と能力に見合った公正なものに組み替えることです。先ず、給与を「人に対する給与」と、「仕事に対する給与」に分けて考えます。「人に対する給与」とは、経験給や年齢給といったいわゆる「基本給」に値するもの。これに対し「仕事給」とはインセンティブや職務手当、資格手当といった要素を加えたもの。これが、好き嫌いとか、いろいろなさじ加減が重なることで、結果的に給与体系がゴチャゴチャになってしまっているのが、最大の問題点でもあるわけです。会社が最低の生活を保障するためのセーフティーネットというべき「基本給」に、今まで評価していた項目や評価してもらいたかった項目を手当てする「仕事給」を切り分けて体系化し作り替える。そうすれば、社員から給与の決め方について、明確な理由や基準を求められたとしても、納得が得られる回答ができるはずです。

― ただ、成果や生産性をあげるための仕事を数値化するのは難しいのでは? 

営業職などはわかりやすいかもしれませんが、管理部門のように、数値に置き換えることができる成果と、数値に置き換えることが難しい手当てがあるのは事実です。例えば予算目標への達成度合は金額で手当化できます。一方、お客への応対やマナー、満足度アップ、仕事の段取りや気配りなど、数値化しづらい業務内容についても、それによって生産性がどう向上したかを手当として設定してあげることは可能です。つまり、業務を手当として給与に「ひも付け」してしまうという考え方です。

― 当初は、給与を設計する際にエクセルで運用されていたとお聞きします。

まずは、事務所で給与の決め方の原点となる基本給と仕事給に分ける仕組みをエクセルベースで作成し、それこそ手作業で顧問先指導に役立てていました。ただ、実際の運用面では、数値の入れ方等で面倒なことが多いので、『これをシステム化できないだろうか』と以前から考えていました。幸いにもソフト開発の補助金が受けられて、名前も誰もが覚えやすい「給与きめ太郎®」に決定し、ようやく商品化に漕ぎ着けることができました。ソフトの特許も取得し、コンセプトと理念も冊子にまとめて配布しています。初めの導入先は医療関係機関で、理念に共鳴してすんなり導入を決めていただき、その後も継続した指導を実施しています。





「給与設計士」が導入・普及に弾み

― ソフトの使い方に特長はありますか。

溝口税理士

周りの経営者からは、「給与計算ソフトでしょ」とよく言われますが、ここにきてようやく「給与を決めるソフト」という意識が広まってきたかと思います。最大の特長は、評価項目を細かく設定し、等級・号俸に当てはめて運用する複雑なものではなく、かつ、人事考課といった難しさもない点です。個人ごとに手当ての金額を設定し、資格手当・職務手当・インセンティブ手当の順に積み上げていく「絶対評価」と、手当ごとにその対象者を比較しながら、金額とピッチを見直す「相対評価」に基づき、公平で納得できる評価の操作が繰り返し行えます。ソフト導入によって、既存の給与体系をすぐに変更する必要はなく、現在の給与をソフトに入力するだけで、10年間の推移を見通しながら独自の給与体系も作れます。

― 給与に対する考え方を整理してサポートするソフトの導入効果について、反響はいかがですか。

医療分野からは、「給与全体の枠組みが決め易かった」、「年俸制を廃止してこれから従業員のやる気にどう結び付くのか楽しみ」とか、「ソフト導入で就業規則も見直したが、業績もアップし、結果として労働の質が高まった」という声もあがるほど、高い評価を頂いております。このソフトは100名以下の中小企業にぜひ使ってもらいたい。ソフトの画面を見ながら行う10年後のシミュレーションでは、会社と社員の未来を語るコミュニケーションが生まれてきます。

― 企業へのソフト活用を広めるため、独自の組織を立ち上げられたと伺いました。

給与設計を通じて中小企業の業務改善を支援する専門家に「給与設計士」という称号を与え、全国の社会保険労務士や税理士らを会員とする組織「一般社団法人給与設計士協会」(本部=東京・千代田区)を立ち上げています。クラウドソフトの「給与きめ太郎®」は、一部機能制限があるものの、インターネットを使用して10名まで利用できる無料版と、機能がフルに使えて100名まで登録可能な有料版「給与設計Pro」の2種類を用意しています。このソフトを使って、操作方法や導入指導できるのが、「給与設計士」で、実際に「給与設計Pro」を使用しての訪問研修及び集合研修を行う「給与設計士認定講座」を受講してもらえば、一般社団法人給与設計士協会が給与設計士として認定します。給与設計士になると、各産業ごとに都道府県別、年齢別、男女別で平均年収がわかる「産業別モデル年収」が使え、このデータをコンサルティングに活用できるというメリットがあります。無料版ユーザー企業数は27年度80社ほどでしたが、28年度は300社を超え、1年間で3倍超の伸び率を示しております。


「業務改善」切り口に税理士への活用を

― 過去会計という数字の話がほとんどの税理士の関心度はそれほど高いようにも思えません。ビジネスとしてはいかがでしょうか。

「ソフトを使って給与体系を作りましょう」と呼びかけても、関心は極めて低いですが、「業務改善」という切り口でセミナーを開催すると、反応が全く違います。自由に設計できるソフトのメリットを活かしたコンサルティング領域に魅力を感じている税理士が増えてきたのは事実。なかには、無料版ソフトを使ってもらい、その後に「設計料1人1万円」を目安に、顧問先や企業に導入ビジネスを仕掛けている税理士もいます。「給与設計士」及び「加盟店」に登録した税理士には、関与先企業に自由に使える権利が得られるのが、ビジネス的に旨みがあると思います。

― 何となく決められている中小・零細企業の賃金・給与体系。経営者が一番フラストレーションを抱いている給与の問題にどういう解決策を提案できるのか。クラウドソフトの活用で未来が拓けそうですね。

そう言って頂けるとありがたいですね。無料ソフトの導入企業は日増しに増えており、操作や運用面でのフォローで税理士の応援を求めたいと思っています。給与や手当を決めるための会話が生まれるようなソフトは、「人と仕事」に関するツールでもあり、税理士の付加価値としても有効に活用してほしいですね。

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